
ITリソースがかぎられる中で、このような悩みに直面する企業は少なくありません。
岐阜県中津川市に本社を構え、伝統が息づく木製品づくりを主に手がけるヤマコー株式会社も、同様の課題を抱えていました。同社は、製品やビジネスの魅力的な世界観をセキュアに届けることを目指し、長年利用したフリーCMSから「はてなCMS」への「移行」プロジェクトを実施しました。
同社の鈴木美妃さんにCMS移行のリアルなプロセスと、はてなCMSがもたらした変化をお聞きしました。リソースがかぎられた環境でも、「安心・安全」に「ブランドの魅力」を表現し続けるヒントをお届けします。
製品の温もりと「使う人に寄り添う」ブランドの思いを伝えたい
──本日は貴社のコンセプトショップともいえる、東京・青山の「青山 食演生活」にお邪魔しています。木の温もりが感じられる素晴らしい空間ですね。まずは、ヤマコー株式会社の事業内容と、製品づくりにおける思いについて教えてください。
鈴木美妃さん(以下、鈴木):当社は岐阜県中津川市に本社を構え、元々は地元の木材を使った桶や「おひつ」、料理舟などの製造からスタートした木製品メーカーです。現在では、ホテルやレストランの皆さま向けの業務用厨房道具や什器から、一般の方向けの雑貨まで、多様な素材を取り入れながら、食に関する幅広い領域の製品を扱っています。
私たちが大切にしているのは、「使う人に寄り添うものづくり」です。木製品というと、和のイメージを持たれるかもしれませんが、今はイタリアンやフレンチのレストランでも木製の食器を取り入れてくださるお店が増えています。
和というジャンルに固執せず、プロの料理人の方、はたまた一般のご家庭の方であれ、「これを使ったら食卓が面白くなりそう」と思っていただけるような製品をお届けしたいと考えています。

鈴木美妃さん:ヤマコー株式会社が手がけるコンセプトショップ、「青山 食演生活」店長。コンシェルジュとしての顔も持ち、顧客のニーズに合わせて良質なテーブルを演出する製品セレクトなども提供する。
──こちらの直営店「青山 食演生活」は、そうした製品の魅力を直接体験できる場所なのですね。
鈴木:おっしゃる通りです。2022年5月にオープンしたこの店舗は、プロの方向けのショールームとしての機能を持ちながら、一般のお客さまにも開かれたコンセプトショップとしての役割を持っています。ご来店いただくお客さまの約7割が一般の方で、さらにその半数は外国人観光客の方なんです。
木の質感や手ざわり、美しさは写真だけではどうしても伝えきれません。実際に手に取って直接感じていただき、私たちの製品を通じた暮らしの楽しみ方を体験していただく場所として、この店舗を運営しています。

木の温もりがそこかしこに感じられる「青山 食演生活」は、自社サイトと同様にヤマコーのブランドの品質、世界観を体現している。
ヤマコーの世界観を継続的に「CMSで表現」するうえで感じていたシステムの保守、安定運用の課題
──そうした製品の魅力や世界観を、はてなCMSを通じて発信していこうとしてくださっているのですね。
鈴木:私たちはただ商品を「売って終わり」ではなく、商品があることで生まれる空間や「物語」をお届けしたいと考えています。そのためには、自社サイトを通じて私たちの製品や世界観をしっかりと発信することが欠かせず、CMSは重要なツールです。しかし、以前の自社サイト運用においては、その発信の裏側を支えるシステム基盤に課題を感じていました。

ヤマコーのさまざまな情報が掲載されたオフィシャルサイトの機能はすべてはてなCMSでまかなわれている。
──具体的には、自社サイトのシステム運用にどのような課題があったのでしょうか?
鈴木:以前の自社サイトは、固定ページ機能とブログ機能が合わさったフリーの国産CMSを使い運用していました。スタッフが文字や画像を入力すれば更新できる状態まで弊社のIT担当者が整えてくれていましたが、同時にその担当者が感じていた大きな課題が、オープンソースのPHP系アプリケーションゆえの「セキュリティとメンテナンスの不安」でした。
無料で手軽に構築でき、ある程度のアクセスを集めるサイトまでは作れるのですが、フリーソフトであるがゆえに、裏側での保守・運用は自社で担う必要があります。日常的なマイナーアップデートにはIT担当者が対応していましたが、システム全体に関わるメジャーアップデートとなると、既存のデザインや機能が崩れる恐れもあり、作業負荷やリスクが大きく、どうしても二の足を踏んでしまう状態でした。
さらに、拡張機能である「プラグイン」にも課題を感じていました。最初は便利で使っていても、時間経過とともに開発が停滞し、メンテナンスもされなくなってしまうといったケースが懸念されました。セキュリティの脆弱性というリスクに常に目を光らせねばならない状態だったんです。
ヤマコーの世界観を安定して「CMSで表現」し続けるためには、安心・安全なインフラ環境への「移行」が必要でした。
https://www.hatena.ne.jp/cms/security/
「フリー製品」と「高額パッケージ」の狭間で。移行プロジェクトの始動とはてなCMSを選んだ理由
──そこで、新たなCMSへの「移行」プロジェクトが立ち上がったのですね。世の中には多数のCMSがありますが、どのように移行先を検討されたのでしょうか?
鈴木:世界中で広く使われているPHP系CMSを基盤とした個人開発の製品などの売り込みもいただきましたが、やはりPHPのフリーソフトが大本にある以上、脆弱性に起因するリスクが拭いきれません。また、個人開発の製品の場合、導入した後に開発者の方が開発を停止してしまった場合などにサポートが受けられなくなってしまうといった、属人化のリスクも懸念されました。
また一方で、エンタープライズ向けのCMSパッケージも検討しましたが、そうした製品は月額費用が非常に高額で、当社の予算には合いませんでした。

製造に独自の技術を要する「飯台(はんだい)」などの桶製品は、全国から注文が届くそう。
──その中で、「はてなCMS」を選定された決め手は何だったのでしょうか?
鈴木:さまざまな模索をするなかで適切な移行先となったのが「はてなCMS」でした。IT担当者は2000年代前半からはてなさんを存じ上げており、確かな技術力を持つ企業だという認識を持っていました。
決め手になったポイントは大きく3つあります。ひとつは、「固定ページとブログを組み合わせた基本的な考え方」が、以前使っていたCMSと似ており、現場も移行のイメージが湧きやすかったことです。
もうひとつは、はてなさんという企業の規模感と技術力への信頼感があったことです。多くのエンジニアを抱える技術的なレベルの高い企業にインフラを任せられるという「安心感」は魅力でした。
そして最後が、コストパフォーマンスです。低予算でもリスクのあるフリーソフトと、安心感はあれども高額なエンタープライズ向けCMSのちょうど「中間」に位置するサービスとして、私たちが求める要件にフィットしたと捉えています。
──CMSの移行プロジェクトにおいては、「既存コンテンツのデータ移行」といったハードルがあると思います。実際のプロセスにおいて、苦労された点はありましたか?
鈴木:はてなさんにはPHPやデータベース、HTML/CSSに通じたエンジニアがいらっしゃるだろうと期待していましたので、データ移行など、技術的な面での不安はありませんでした。問題なく新しい環境へ移してくれるだろうと見込んでいましたし、実際に、技術的なトラブルなくスムーズに移行を進めていただきました。

カタログのダウンロード機能なども旧CMSから移行された。新規のカタログをアップロードする際の作業も簡単だとか。
インフラ管理からの解放と直感的な更新操作。SEO向上と運用ノウハウの蓄積というメリットも
──無事に移行を終え、はてなCMSを導入してどのような成果を感じていらっしゃいますか?
鈴木:インフラ周りの管理をお任せできたことによる「安心感」をもちろん感じています。かつてのように、「脆弱性が放置されていないか」と気にする必要がなくなりましたし、もし急になんらかの理由でアクセスが急増するようなケースがあっても、裏側ではてなさんがサーバーを調整して対応してくれるでしょう。この「何もしなくてもインフラが守られている」という安定感は、企業のサイトを継続的に運営していくうえで大きな意味があると感じています。
──運用面や、その他の効果についてはいかがでしょうか?
鈴木:SEO(検索エンジン最適化)の観点でも、効果が出ていることを実感しています。はてなCMSに移行してから、特別な施策をしていないにもかかわらず、検索流入が増えていると感じています。
https://blog.hatenablog.com/entry/hatenabb-subdir
また、日々の運用体制についてもブログ型CMSならではの使い勝手の良さを感じています。展示会のお知らせやカタログの追加といった日常的な情報更新は、テキストを書いて画像をアップロードするだけで公開できます。最初は操作に慣れない部分もあったようですが、現在ではIT担当者だけでなく、他のスタッフも日々の更新をスムーズに行えています。

ブログの操作性を踏襲したはてなCMSならば、簡単に情報を更新できる。「お知らせ」の更新をコンスタントに実施しているが、IT担当以外のスタッフでも慣れれば簡単に作業できるという。
──運用における弊社のサポートに関してはどのように感じておられますか?
鈴木:はてなCMSはプロフェッショナルな有償サービスですので、問い合わせに対して必ず的確な回答がもらえるといった、基本的なサポートに関しては事前のイメージ通りでした。たとえば、「この部分のデザインを変えたいが、どのCSSを触ればいいか?」と質問すると、きちんと教えていただけます。
そうしたやり取りをCMSを取り扱うスタッフが直接行うことで、単に課題が解決するだけでなく、当社のスタッフの中に「HTMLやCSSの運用ノウハウ」が蓄積されていきます。現場の運用スキルが底上げされるのは、良い副産物でした。
──最後に、今後の自社サイトの展望をお聞かせください。

「和」「木」を軸としながら、それ以外のさまざまな要素や素材も取り込み、テーブルとそこに集う人たちの時間を彩りたいと鈴木さん。そうした世界観を自社サイトでも追求していくという。
鈴木:システム面の要望としては「固定ページの管理画面がツリー構造で視覚的に管理できるようになると、より直感的で使いやすくなる」という期待の声が挙がっています。今後の機能アップデートに期待しています。
そしてサイト全体の展望としては、はてなCMSという安心できるインフラへ無事に移行できたことで、今後は「弊社らしい世界観をCMSでどう表現していくか」という部分に注力していけるといいなと考えています。
先ほどお話しした通り、当社の商材は1000年以上前から続く伝統的な素材や技術を生かしたものです。今後は当社の直営店「青山 食演生活」の店舗空間のように、「木の魅力」や「和を基本とした心地よさ」、そして製品がもたらす「食卓の物語」をトータルでアピールできる、ヤマコーらしい見せ方を追求していきたいです。
──本日は貴重なお話をありがとうございました。
ヤマコーが目指す、ブランドの世界観を「CMSで表現」する自社サイト。その挑戦の裏側には、はてなCMSの「安心できるインフラ環境」がありました。
ITリソースが限られる中でも、日々の運用不安を払拭し、コンテンツを通じた発信に本来の力を注ぎたい。そう願う担当者にとって、手厚い伴走サポートを備えたはてなCMSは力強いパートナーとなるはずです。
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取材・編集:はてな編集部
写真:小野奈那子