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ビッグローブ株式会社は2021年7月、「あしたメディア」というオウンドメディアを立ち上げました。コンセプトは「社会を前進させる情報発信」。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」が示す17分野に紐づく形で、社会課題について世の中に投げかけるような記事が並びます。
今回は「あしたメディア」の編集を担当する中井圭さんに、オウンドメディア立ち上げの背景や編集方針、今後の展望についてお話を伺いました。

「あしたメディア」 企画・編集 中井圭
映画解説者。「映画の天才」代表。「偶然の学校」代表。テレビ、ウェブ、新聞、雑誌、トークイベントなどで映画解説を展開。現在、WOWOW「映画工房」レギュラー出演中。書籍「スティーヴン・スピルバーグ 映画の子」「森田芳光全映画」寄稿等。BRUTUS選定「30人のシネマコンシェルジュ」。
「社会貢献事業を続けてきた」という歴史と「10~20代の認知度を向上させたい」という目的が合致
__あしたメディアの立ち上げは2021年7月。このタイミングで「社会を前進させる情報発信」というコンセプトのもとオウンドメディアを立ち上げることになった背景は何でしょうか?
中井さん SDGsという言葉が一般化する以前から、BIGLOBEでは会社として積極的に社会貢献事業を続けてきました。最近ですと、温泉地でのワーケーションを意味する「温泉ワーケーション」を推進しています。コロナ禍で観光地は大打撃を受けたわけですが、温泉地では特に平日の利用者が減っているそうです。温泉ワーケーションの推進により、温泉地としては企業に連泊してもらえますし、企業にとってはテレワークによって希薄となった社内コミュニケーションの活性化につながります。テレワークで閉じこもりがちだった社員さんもリフレッシュでき、コロナ禍で発生してしまったあらゆる社会課題の解決に結び付くのです。

社会貢献事業として温泉ワーケーションを推進している
温泉ワーケーションの推進は、脈絡なく始まったわけではありません。BIGLOBEでは旅行に関するポータルサイトを運営しており、ユーザー投票によって応援したい温泉地を選出する「温泉大賞」を毎年開催しています。これまで温泉地にお世話になっていたので、そのご恩をお返ししたいという思いが今回の取り組みのきっかけになりました。
一方で、BIGLOBEが社会貢献事業を続けてきたということは、一般にはあまり知られていません。この部分に課題を感じていました。
__あしたメディア立ち上げの背景には、「社会貢献事業への認知度を高めたい」という思いがあったのですね。
中井さん その通りです。もう一つ、10~20代のBIGLOBEの認知度が低いことも、背景としてありました。BIGLOBEは元々NECのグループ会社です。分社する前は、NECのパソコンにBIGLOBEのポータルサイトが備え付けられていました。なので、40代の認知度はとても高い。しかし、それよりも下の世代の認知度はどうしても低くなってしまっていました。
若年層の方は、SDGsをはじめ社会課題に対しての関心度が高いです。「社会貢献事業を続けてきた」という部分と若年層の関心がリンクし、あしたメディアの立ち上げに至りました。
自社だけの情報発信では意味がない
__ターゲットも若年層を想定しているのでしょうか。
中井さん そうですね。10~30代前半の「Z世代」「ミレニアル世代」に設定しています。
__流入経路はどうなっていますか?
中井さん SNSがほとんどですね。記事を読んだ方がSNSでシェアしてくれています。最近では、ウクライナ映画に関する記事がSNS上で大きな反響を生みました。

__こちらの記事は外部からの寄稿記事ですが、内製することもあるのでしょうか?
中井さん 内部のライターが記事を執筆することもあります。私も含め、ライター兼編集者10人ぐらいで編集チームを組んでいます。編集チームはターゲットに近い20代半ばの人材が中心です。
__メディアの記事では多種多様な社会課題に触れていますね。
中井さん 「こんな事業に取り組むBIGLOBEはすごいだろ」というのは出したくないんです。社会課題というのは、一つの会社が頑張ってどうこうなるものではなく、社会全体で動いていく必要があります。
あしたメディアでは、基本的にはBIGLOBEについては触れていません。「社会課題としてこういう事実がある」という普遍的な問題を投げかけていきたいと考えています。実態の伴わないSDGsへの取り組みを指す「SDGsウォッシュ」に陥らないように気を付けています。

“折れない姿勢”が生むメディアへの好感
__社会課題を取り上げる際、表現に気を遣う場面も多いと思います。様々な事情から記事について社内で「待った」がかかるケースもあると思いますが、どう折り合いを付けていますか?
中井さん ライターには基本的に率直に思ったまま書いてもらっています。あしたメディアのターゲットである若い方は、とても洞察力に優れていると感じています。会社として表現の保身に走ると、すぐにそれが見破られてしまうのです。
社会課題として存在している事実をありのままに伝えることで、「社会としてこういう方向に向かっていかなければならない」というメッセージを届ける。これが、あしたメディアのスタンスです。もちろん会社には、スタンスや目的について丁寧に説明しています。メッセージは外部の読者に向けたものであると同時に、「社会はこうなっているからBIGLOBEももっと動いていかなければならない」と社内に対しても発信しているつもりです。
大切なのは、あしたメディアが折れずにスタンスを貫き、メッセージを発信していくことだと思っています。
__社内でオウンドメディアについて説明する場合は、結果も大切になってくると思います。KPIには何を設定していますか?
中井さん PVは一つの指標になっています。SNSのエンゲージメントも重視している数字ですね。
ほかに、サイト訪問者やそれ以外の全く関連のない方に対し、メディアに関するイメージ調査を実施しています。調査では、全世代の7~8割がメディアに対して好感を持っていることが明らかになっています。
個人的にSNSであしたメディアの反応について検索していますが、良好な反応が多いですね。ほかにもリアルな場であしたメディアについて感想をいただくことがありますが、そういった声を総合すると時代の要請に応えられるメディアが運営できているのかなと感じます。
__立ち上げてまだ1年も経っていないですが、手ごたえを感じられている印象です。
中井さん 立ち上げ当初は「知り合いをたどって取材してコンテンツを作る」という運用の仕方でした。今ではメディアとしての信頼が積み上がってきたこともあり、インタビューまでがスムーズになったと感じています。断られる割合が減ってきましたね。
Podcastとオウンドメディアの相乗効果
__CMSとして「はてなブログMedia」を選んだ理由は何でしょうか?
中井さん セキュリティの部分でしっかりしているところが大きかったですね。管理画面へのログインにしても担当者IDだけでなく、指定したIPアドレス以外は制限がかかるなど、非常にセキュアだという印象を受けています。
__メディアとしての今後の展望についてお聞かせください。
中井さん 引き続きソーシャルグッドなコンテンツを届けていきたいです。
ほかにも、個人的にはPodcastに大きな興味を持っています。ラップデュオchelmico(チェルミコ)のRachel(レイチェル)さんをメインMCに迎え、実験的に2021年12月から「あしたメディア in Podcast(全16回)」を配信しました。Rachelさんから「またやりたいね」との声をいただき、いまは延長版を放送しています。

Podcastは、コンテンツを届けるチャネルとして有効なのはもちろん、オウンドメディアにも好影響を与えてくれると感じています。Rachelさんもそうですが、Podcastの収録でコミュニケーションを取ることで、メディアとしてのスタンスを理解いただき、共感していただける方が増えると思うんです。「このメディアは信頼できる」と感じてもらえれば、Podcastだけでなくオウンドメディアにも協力していただけるようになります。Podcastとオウンドメディアで良い相互作用を生みつつ、メディアの強化に取り組んでいきたいですね。
__今後の展開が楽しみです。本日はありがとうございました。
執筆:クマベイス