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継続的な企業オウンドメディアの運用を続けている担当者に聞くシリーズコンテンツ「持続可能なオウンドメディア運営のヒント」。今回はSMBC日興証券が手掛ける投資情報メディア「日興フロッギー(旧名称:FROGGY)」の運用を担当する横山敦史(よこやま あつし)さんにお話を伺いました。

オウンドメディアは適切な運用を行うことでリード獲得やエンゲージメントの強化、採用などさまざまなメリットが期待できる一方で、一定の成果が出るようになるには中長期的な運用が必要*1とされています。

ここで重要なのは、オウンドメディアを単なる情報発信の場ではなく「オウンドメディアでどう事業に貢献するか」を踏まえた戦略設計・運用ができているか。ここが考えられていると、社内でもオウンドメディアの価値や存在意義に対する共通認識が生まれ、持続的なメディア運用にもつながるはずです。

「次世代の投資家層」との接点創出を目指し運用を開始した日興フロッギーでも、読者行動を踏まえた機能開発や、コンテンツを発信する媒体だからこそできることを続けることで、8年以上に渡る継続的な運用が行われているようです。

\オウンドメディアの立ち上げを検討している方に/

「これから」の投資家層と接点を持つためのメディアとして誕生

「日興フロッギー」編集長 横山敦史さん

ーー「日興フロッギー(旧名称:FROGGY)」は2016年11月にローンチしたメディアですが、横山さんはいつ頃から運用に関わるようになったのでしょうか。

2017年の春頃からです。それ以前は7年ほど「投資情報部」という部署に在籍していたのですが、そこではお客さま向けに日本株全般の情報発信を担当していました。レポートの執筆やセミナーの講師といった業務をしていたこともあり、その経験からフロッギー編集チームにジョインすることになりました。

参画してから現在に至るまで投資初心者向けのものから銘柄紹介まで幅広く執筆・編集を担当しています。また、2021年に編集長となってからは、日興フロッギーの全体方針や戦略についても深く関わるようになりました。

ーー日興フロッギーは運用当初は「FROGGY」という名称で運用されていました。改めて立ち上げの背景について伺えないでしょうか。

もともとは2015年頃にスタートしたプロジェクトの発足がきっかけです。当時はネット証券会社が台頭してきた頃で、当社はオフライン(対面)中心のビジネスモデルをとっていましたが、「それだけではいけない」という課題感を持っていました。

ーーデジタル面でのアプローチをしていく必要性が増していった、ということでしょうか?

はい。もう少し補足すると、当社のサービスを利用いただいているお客さまに関しては、高齢層の割合が多いという現状がありました。既存のお客さまと接点を持ち続けることも大事ですが、「次世代の投資家層」となる40代前後の方、あるいはもっと若い方とも接点を持つ必要があると考えていたんです。

今でこそNISA(少額投資非課税制度)などの浸透もあり、若いうちから投資を始める方も増えてきていますが、当時はまだ投資にハードルの高さを感じる方は多かったと思います。

その一方で、老後のお金に関する不安や悩みというのはなんとなく皆が抱えていて、「何か対策したいけれど、何をすればいいのか分からない」という意識を持つ方はこの頃から多かったです。そこで、このような方に向けて、投資を含むお金に関する情報を発信していき「日本人をSURVIVEさせる」ための施策として、日興フロッギー(FROGGY)がスタートしました。

運用当初は投資情報メディアとして専念しており、証券口座を持たなくても楽しめたり、あまりお金や投資の知識がない方でもわかりやすいコンテンツを提供することを大事にし、まずは「お金に関する正しい知識」を届けることを意識していました。


投資情報メディアから「記事から株が買える」投資情報サービスへ

ーーその後、2019年2月には現在の象徴的なサービスでもある「記事から株式が買える」機能が追加されました。この機能開発の背景にはどんなものがあったのでしょうか。

運用初期の段階から「最終的にはお取引につなげたい」という思いはありました。というのも、せっかく記事を読んで投資に興味を持ったとしても、そこからまた新たに自分で口座を開く証券口座を選んで、銘柄を調べて……というのはユーザー体験としてもよくありません。記事で紹介された株を直接買えるような仕組みがあることで、読者体験の向上が図れると感じていました。もちろん、当社としても口座開設としていただくきっかけにもなります。

日興フロッギーでは記事アイコンに「株カエル」マークがあるものは、そのまま記事内から株を買うことができ、それ以外にも画面トップにある検索バーから検索して株を買うことも可能

ーーお金や投資に関して学ぶだけでなく、そこから実際に投資を始められるというのは、読者体験としてもシームレスでありがたいはずです。投資に関心を持つタイミングは色々とありますが、少し時間が経つと面倒くささが勝って結局後回しになっちゃう……という人は多いと思います。

手軽さというのは一つあると思います。また、「一定の資産が必要そう」といったハードルを感じている人も少なくありません。日興フロッギーではSMBC日興証券の口座をお持ちの方なら100円から約3900銘柄の個別銘柄・ETF・REITを購入できます。また、記事を読み、そこで気に入った会社や注目したい会社に出合ったら、すぐにその記事から株を買うことができるので、モチベーションが高い状態ですぐ行動に移せる設計になっています。

▼日興フロッギーで株を買う方法は、以下の記事も合わせて参照ください。

ーーマーケティングファネルの「認知〜購入」まで全て記事上で完結する画期的な取り組みだと感じました。また同年には、メディア名も「FROGGY」から現在の「日興フロッギー」となったかと思います*2。メディア名の変更には、どういった意図があったのでしょうか。

「FROGGY」として運用していたときは、「SMBC日興証券が運営しているオウンドメディア」であることを知らないまま来訪している方も少なくありませんでした。ただ、記事から株式が買える機能を利用する場合、SMBC日興証券の口座が必要(※)になります。そのため、SMBC日興証券とは無関係だと思っていた方が口座開設ページなどに誘導されたときに、違和感を覚えるケースもあったと思います。そこで改めて「当社ブランドの一環である」と認識してもらいやすくするため、名称変更を行い「SMBC日興証券のサービス」として打ち出す決断をしました。

※SMBC日興証券の口座と合わせ、日興イージートレードの申し込みが必要になります

ーーオウンドメディアを運営する目的として多い「自分たち(会社やブランド、サービス)のことを認識してもらう、好きになってもらう」ためには、「どこが運営しているメディアなのか」を示すことも重要だと思います。特にメディア名は来訪した方が目に触れやすい位置に表示されるので想起や認知という点で大きなメリットがある一方で、企業名が全面に出ているとどうしても宣伝色を感じられる場合もあることから、あえて企業名を出さない判断をされている企業様も少なくないと個人的に感じます。このあたりのバランスって非常に難しいですよね。

そういった懸念は確かにありましたね。ただ、実際に「日興フロッギー」としたことで、「SMBC日興証券のサービス」であると認識してもらいやすくなりましたし、社内的な立ち回りとしては、やれることが広がるなという感覚がありました。

というのも、現在ほどコンテンツマーケティングの考え方が浸透していなかったこともあってか、「FROGGY」時代では編集チーム外と連携をしたり、新企画のために予算を申請したりする場合に、「なぜこのメディアを運営しているの?」といった疑問を持たれるケースは少なくなかったんです。

もちろん私たちも定期的にこのメディアの目的や役割について発信するようにしていましたが、記事から株が買え、口座開設にもつながる仕組みを実装する前は「当社の顧客が本当に増える施策なのか」という声をもらうこともありました。

ーー施策のことをあまり知らない遠い部署にいる方や、経営者層などから「費用対効果としてどうなのか」といったフィードバックがあるのは、オウンドメディア運用のあるあるだと思います。

私たちの場合は名称を変更し、会社の施策の一環として正式に位置付けることでイメージがつきやすくなったのか、反応も大きく変わりました。名称変更は、単なる名前の変更にとどまらず、当社全体の「日興フロッギー」の取り組み方そのものを変えるきっかけになったと感じています。

ーー現在、日興フロッギーのKPIは何を見ていらっしゃるのでしょうか?

いくつか指標はありますが、新規の口座開設数ですね。それと、定期的にメールマガジンを配信しているので、開封率やメルマガ内で紹介した記事への遷移数なども見ています。実際に、紹介した記事で取り上げている銘柄の売買が発生するケースも少なくありません。

ーー日興フロッギーは月間1,100万PV(※2024年3月実績)のアクセスがある大規模メディアかと思いますが、PVについてはどう捉えていますか?

もちろん全く見ないというわけではありませんが、運用年数も長くなってきたこともあり、媒体としては成熟フェーズに入ってきていると考えています。そのためPVを伸ばしていくというよりは、メディアに訪れたユーザーがしっかり記事を読んでくれているか、そこから口座開設や株の購入といった「どんな行動をしてくれたか」の重要度を上げている、という感じですね。

日興フロッギーのキャラクター、カエルくん

メディアの「佇まい」は大事にしたい

ーー今では投資情報メディアという立ち位置から「投資情報サービス」とバージョンアップされていますが、その中でもやはり軸となるのは「コンテンツ」だと思います。運用していく中で狙うターゲットやコンテンツの方針なども変化していくかと思いますが、改めて、今のメインターゲットについて伺えますか。

30〜50代の働く世代、かつ将来のお金について何らかの不安を抱えているなどの理由から「投資の必要性」を感じる瞬間を持つ人たちをメインにしています。こうした方々に向けては、投資初心者や未経験の方でも楽しく学べるようなコンテンツを提供しています。とっつきやすくなるよう、親しみやすさを覚えるイラストやマンガを活用するといった工夫もしています。

イラストレーター・五月女ケイ子さんによるNISAを利用した投資について学んでいくシリーズコンテンツ

また最初に少しお話した通り、当社のオフライン(対面)型サービスをすでにご利用いただいているお客さまも、オンラインで情報収集をするケースが増えてきました。そうしたデジタル活用の広がりを受け、既存のお客さまであったり、あとはすでに投資を始めていてプラスの情報を欲しいと感じている個人投資家の参考となるよう、中・上級者向けコンテンツも定期的に発信するようにしています。

▼旬な話題に関連した銘柄をウィークリーで紹介する連載「銘柄トレンドWATCH」

ーー日興フロッギーのコンテンツを拝見していると、「3分でわかる・「99%抜けるドリブル理論」入門」「3分でわかる・大人の教養としての将棋入門」「3分でわかる・楽しくはじめ、続けられる自炊入門」など、お金や投資に関する話題が全く出てこないコンテンツも見かけます。こういったコンテンツはどのような狙いがあるのでしょうか?

これらのコンテンツ発信の意図としては、「お金や投資情報に興味を持つであろう人の周辺情報」も、メディアに訪れるきっかけとなるというものがありました。人は趣味に関するものであったり、仕事に関することであったり、それこそお金に関することであったり、日常生活の中でさまざまなことに興味関心を持つはずです。そのため、何らかの興味関心に引っかかるコンテンツに触れていただく中で、結果として日興フロッギーで発信する投資情報につながれば、といった思いがありました。

その後、株の取引機能が実装されたり、すでに投資を実践されている方へのフォローといった役割も担うようになったりしたことで、日興フロッギー=投資やお金の情報を発信するメディアというイメージが浸透していくにつれ、上記のようなコンテンツ頻度を徐々に減らしていくようになりました。現在はできるだけ何かしら「お金」や「投資」を想起させるようなコンテンツを出すようにしていますね。

ただ、現在に至るまでメディアの「佇まい」は残していこう、というのは運用に関わるメンバー全員の共通認識としてあります。運用当初から意識している「わかりやすさ」という点は、すでに投資を積極的にされている方や知識をお持ちの方にとっても理解を深める要素となります。そのため、どのフェーズの方が読んでも受け入れてもらいやすいようイラストやマンガ、図などを活用したり、できるだけ噛み砕いた表現にするなどして、楽しく飽きずに読んでもらえるような工夫は続けていきたいです。

ーー読み応えがあったり即時性が求められたりする記事コンテンツを定期的に発信されていますが、制作体制はどのようにしているのでしょうか?

「フロッギー編集チーム」として関わる社内メンバーは6名です。それ以外にも制作パートナーとして運用初期の段階から博報堂グループの「SIX」さんをはじめ、複数のパートナーにご協力いただいています。

パートナーとは定期的な編集会議を実施し、その上でコンテンツ制作に進んでいただいています。日興フロッギーでは記事を読んだ方が「学びになる」「メモしたい」と思ってもらえるような内容であるか、というのを大事にしたいので、そうした目線合わせはしっかり行うようにしています。


ーーコンテンツを「読んでもらう」ための工夫としては、どういった流通チャネルを意識されているのでしょうか。

ダイレクト流入がメインではありますが、SNSを起点としたソーシャル拡散も意識しています。その他にも、最近ではGoogle Discoverで記事が取り上げられることも増えてきたので、公開した記事が掲載されているかどうかはチェックするようにしています。

さまざまな事業貢献の形を提示し、日興フロッギーならではの役割を示し続ける

ーー日興フロッギーは、ユーザーとの接点を持つだけに留まらない事業への貢献をされていると感じます。一方で、オウンドメディアを運用する企業が抱く悩みとして、経営層(決済者層)から費用対効果(ROI)を指摘され、成果を実感できる前に志半ばで運用ストップの判断が下ることもあります。「日興フロッギー」は消費者に向けた情報発信の場としてだけでなく、サービスとしての成熟も見せているかと思いますが、経営層(決済者層)との合意形成で苦労されたことはありますか? また、「継続の意義」を浸透させるために意識されていることがあれば合わせて伺いたいです。

先程少しお話させていただいた通り、FROGGY時代から「このメディアに投資する理由」という点を示すのは、私も悩むことが多いです。口座開設や日興フロッギーを通しての株の購入をするアクティブユーザーは着実に増えてはいますが、コストパフォーマンスを問われると「営業部門の方が収益率が高い」という話になってしまいがちです。

ただ、日興フロッギーではコンテンツを通した貢献というのがやはり大きいと感じています。当社では各企業のIR活動も支援しているのですが、「上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質」というシリーズは、上場企業の社長への取材を通して企業やサービスの概要だけでなく、経営者の「アツい想い」も届けるコンテンツになっています。

取り上げる企業は日興フロッギー編集チームと法人部門が連携し、さまざまな角度から検討を重ねて決定しています。企業側としては多くの世代に自社のことを知ってもらいたいというニーズがありますし、投資初心者の方にとっては、経営者からの想いを知ることでその会社を応援しよう、投資してみようというきっかけにもなります。個人投資家と企業をつなぐようなコンテンツを制作し発信することは、日興フロッギーの大きな役割にもなっていると感じています。実際に記事を通して購入につながっているかも分かるので、記事の反響を受けて喜んでいただける企業様も多いです。こうした取り組みは、経営層からも評価をいただいています。


ーー最後に、日興フロッギーの今後の展望について伺えますか。

運用当初から現在に至るまで日興フロッギーが掲げている「日本人をSURVIVEさせる」という点はぶらさずにやっていきたいと思います。何かと変化が大きい今の時代で、お金に関する正しい知識を身につけることは非常に重要です。その中で日興フロッギーは投資について楽しく学び、実践までの後押しができるようなメディア、サービスだと思っているので、もっと多くの方に活用してもらい、お金に関する将来の不安を減らす一助となればいいなと。

また、当社の取り組みをはじめ、ユーザーに直接情報を発信できることも強みだと思っています。他部署からも「これを掲載できないか」や「こんなことができないか」といった相談を受けることが多く、当社を代表する情報発信の場としてもっと機能させていきたいと思います。

最近では金融経済教育の重要性が注目されています。政府からも各金融機関に対して取り組みを求められており、当社でも2024年秋に経営企画部内に「マネーライフデザイン室」という金融経済教育を全社的に推進する専門の部署を設立しました。日興フロッギー編集チームとしても同部署と連携を密にしており、サステナビリティの観点でも事業貢献していきたいと考えています。

ーーありがとうございました!


撮影:関口佳代

※記事中の情報は取材時点(2024年12月)のものになります


 

オウンドメディアの作り方ハンドブック

「はてなビジネスブログ」を運営する株式会社はてなでは、企業のオウンドメディア支援を行っています。「オウンドメディアの作り方ハンドブック」では、オウンドメディアの立ち上げや見直しに役立つハンドブックをダウンロードいただけます。計画から実際の運用まで、各フェーズごとに必要になるタスクを網羅的にまとめており、新規立ち上げだけでなく既存メディアの運用見直しにもご活用いただけます。

*1:Content Marketing Instituteの創始者、Joe Pulizzi氏は成果を実感できる目安として18ヶ月以上、さらにグロースさせるには24ヶ月以上の継続的な運用を推奨している(参照:https://contentmarketinginstitute.com/articles/success-long-term-content-model/

*2:参照:お客様へのお知らせ - SMBC日興証券

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