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トイトマさん

「相談するのが苦手」と感じている人は多いのではないでしょうか。

ビジネスでプロジェクトに携わると、自分一人では解決しきれない局面は誰にでも訪れます。企業のオウンドメディア運営でも、他部署を巻き込んだ企画立案や、寄稿やインタビューの協力を得たいと思っても、相談ハードルの高さを感じてしまい、他部署への働きかけに消極的になっている担当者も少なくないように思います。

そこではてなビジネスブログでは、こうした社内外で他者との良好な関係を築き、周囲を巻き込んでいくヒントを探るために、『相談する力』を上梓された株式会社トイトマ代表取締役社長・山中哲男さんにお話を伺いました。

山中さんは、著書『相談する力』の中で、「相談は、業界や職種を問わず、やりたいこと、実現したいことに近づくネクストアクションを見つけることができる」と語ります。山中さんは、未経験から居酒屋を開業し、丸亀製麺の海外1号店の支援をはじめ、幅広い分野で「相談する力」を通して事業を切り開いてきました。

そんな山中さんに、相談が上手な人の特徴や、ふわっとした相談をしてしまいそうな時に気をつけるポイント、オウンドメディア運用における活用の仕方などについてお聞きします。ビジネスシーンでよくある「相談」というシチュエーションですが、改めて相談の仕方を意識することで、自然と周囲を巻き込むことができ、物事を一歩進めることにつながるようです。

\オウンドメディアの立ち上げを検討している方に/

相談すると、物事が力強く動き出す

ーー 山中さまの著書『相談する力』では、「相談は、業界や職種を問わず、やりたいこと、実現したいことに近づくネクストアクションを見つけることができる」と語られていたのが印象的でした。改めて、山中さまが本著書を発表する上で一番「伝えたい」と感じていた点についてまずは伺いたいです。

「一人で抱え込まず、周囲を巻き込みながら進む」ことの重要性を私自身肌で感じることが多かった、というのがあります。

私は20歳で居酒屋の開業をした経験が現在の活動につながるきっかけとなっていますが、当時は居酒屋でのアルバイト経験さえありませんでした。お金の借り方も、物件の契約方法も、業務用のごみの捨て方でさえわからない。そんな自分を見て、さまざまな人が相談に乗ってくれました。知識が無いからこそ人に相談するしかなかったとも言えますが、相談のおかげで事業を前に進めることができたと実感しています。

ビジネスシーンでは、何か困ったことに直面したり、周囲の協力を仰ぎたくてもつい一人で抱え込んでしまう人も少なくないように思います。そこで『相談する力』では、リーダーに限らず、何かしらの事業やプロジェクトに携わるビジネスパーソンに向けて、行き詰まったときこそ、「相談」というビジネススキルを発揮できれば、物事が前に動き出すんだ、ということを伝えられればと思い、執筆しました。

山中さん
山中哲男 (やまなか てつお)さん。1982年兵庫県生まれ。新規事業開発支援、既存事業の戦略立案をハンズオンで支援するトイトマを創業し代表取締役に就任。同時期、米国ハワイ州にて日本企業に対し海外進出支援、店舗M&A仲介にも従事し丸亀製麺の海外1号店などを支援してきた。自身の経験を元にした『相談する力』を2024年1月に発表。

ーー ビジネスシーンにおいて、周囲の人への協力を仰ぐことが苦手という方は一定数いると感じています。そう思ってしまう背景としては、どんな心理状態になっている(心理的に邪魔しているもの)と考えられますか。

いくつかの要素があると思いますが、一例として「相談は相手の時間を奪ってしまうので申し訳ない」と感じているケースがあるのではないでしょうか。また、過去に相談を持ちかけて断られ続けたり、嫌な顔をされたりした経験があると、相談へのハードルが高くなるのかもしれません。

たしかに相談で相手の時間を少なからず取ることは事実ですが、仕事をする中で自分自身も相談を受けることはありますよね。そう思うと少しハードルは下がるかもしれません。もしそれでも不安という方は、いきなり相談を持ちかけるのではなく、事前に「相談する時間をとってもいいか」というアポイントメントを取ってから相談に臨む、という流れにしてみてはどうでしょうか。

アポイントメントが取れたら、相手に相談に乗る意思があるということなので、相談しやすいはずです。もし相談のアポイントメントを断られても「たまたまその人とのタイミングが合わなかっただけ」と捉えて、自分が否定された気持ちになる必要はないと思います。相談相手は一人に固執することもないので、断られても引きずらずに次の相談相手を探すぐらいの気持ちで良いのかと。

ーー 相談を持ちかけても、相手の反応が芳しくない……という経験が続くと、相談へのハードルが高くなり「相手の時間をとるのが申し訳ない」もですが、「もういっそ自分一人でやってしまった方が早い」といった思考になるケースも考えられます。ただ、やはり全てのことを一人で解決していくのは難しい。そうなったときに「相談」という選択肢を持てるかというのは非常に重要だと思います。

そうですね。初めにお伝えした通り「一人で抱え込まない」ということはすごく大事だと思っていて。相談することでネクストアクションが見つかったり、やろうとしてたことの解像度が上がったりするので、自力癖がついている人こそ、最初は手間だと感じても何か行き詰まりを感じたときに「相談する」という選択肢を持ってもらえるといいですね。

相談する力――一人の限界を超えるビジネススキル (海士の風)

山中さんの著書『相談する力――一人の限界を超えるビジネススキル』(海士の風)

相談のポイントは目的や背景も伝えること

ーー先ほどのお話で「過去に相談を持ちかけて失敗した」経験を持つ人の中には、そもそも「相談の仕方」がうまくなかったパターンもあったのではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。

あると思います。代表的なのは「結論ファースト」のような形で、結論だけ伝えてしまうことです。ビジネスシーンでは「結論を先に話す」ことを求められるシーンも多いと思いますが、こと「相談」の場においては結論だけの質問をしてしまうと、相談に至った背景や思いが伝わらずに適切なアドバイスや回答をもらえないことが多いです。

例えば、以前「資金調達で困っているので、良い取引先を教えてくれませんか?」という相談を受けたことがあるのですが、この一言だけで聞かれても、相手がどんな段階にいるのか、他の取引先候補には声をかけたのか、何を目指しているのかなどは伝わってきませんよね。

おそらく相手は私が忙しいだろうと思い、短めに相談してくれたのだと思います。しかし相談の背景や目的がわからないので、私から適切ではないアドバイスをしてしまったり、適切ではない人を紹介してしまったりする可能性があります。私に「相談に乗って役に立ちたい」という気持ちがあるのに、です。

ーービジネスシーンで他者に相談をするときに心がけておくべきポイントのようなものはあるのでしょうか。

相談をするときは相談の背景や目的も伝えることを意識してもらいたいです。著書では「何を伝えるのか?(What)」という章で、以下の「相談において共有すべき3つのポイント」を紹介しています。

  • 目的:何のためにやるのか
  • 原体験:なぜそれをやろうと思ったのか(思っているのか)
  • 現在地:やりたいことに対して、今自分はどの位置にいるのか

相談を受ける側が一番困るのは、相談した側のやりたいこと、つまり「目的」が曖昧なときだと思います。相談者が何をやりたいのかがわからなければ、どう受け答えすると相手の役に立つのかがわからないままになってしまいます。そのため、まずは相談を持ちかける前に自分の中で相談したいと思っていることに対しての目的を整理するようにしましょう。

もう一つ、どんなシーンでもおさえておきたいのが「原体験」です。これはつまり、相談者が「なぜそれをやろうと思ったのか」という背景を相手に伝えるということです。この熱量が相手に伝わることで、相手からの共感を生みやすくなるはずです。

ーーたしかに、相談する側がどこかその事象に対して人ごとのような感じだと、相手も前のめりになってくれそうですね。

はい。何かアドバイスしようにも「なんだか人任せだな」と思われてしまうような相談の仕方は健全ではないと思います。相談をすることで、相手が自然と協力したくなる、アドバイスしたくなる、と思ってもらえると、結果まわりの人を巻き込んで物事が進んでいくようになるはずです。

相談が上手な人は、周囲を巻き込むのが上手い人とも言い換えられると思います。相談が上手なことによって、結果的に人を巻き込んでいると言った方が正確かもしれません。

そのためにも、3つ目の「現在地」の共有も大切になってきます。これは、やりたいことや相談したいことに対して「見立ての段階なのか」「仮説は立てられている段階なのか」「具体的な計画に入ってきている段階なのか」の各段階になるのですが、この3段階のうち、自分がどこにいるのかを把握した上で、相談する側にも自分がいまどの位段階にいるかを共有することで、相手はこちらの状況を考慮したうえで意見や情報を話しやすくなるはずです。

ーー 相談した時に気を付けるポイントはありますか?

相談の回答を絶対的な正解と捉えずに、選択肢の一つとして捉えることです。相談して受け取ったアドバイス通りに行動したらうまくいかなかった、というケースもあると思います。相手の見立てが間違っていたり、自分がアドバイスを受け取れきれていなかったり、そもそも伝え方に齟齬があった、など原因はさまざまです。ただ、相手のアドバイスが間違っていたと決めつけて、相談を1回きりにしてしまう、という方もいるのですが、とてももったいないことだと思います。そのため、アドバイスされたらあくまで情報の一つとして受け取っておくようにしてほしいです。

また、相談を経て具体的に行動したら、結果を相手へフィードバックすることも大切です。「相談するだけ」ではなく、実際にこうしたよ、その結果こうなったよ、というフィードバックをすることで、その人との関係性を育むことにもつながります。


ふわっとした相談を防ぐために

ーー どんな相談をする上でも「目的」の言語化(自分自身で誰のため、何のため、というのを相手に説明できる)が重要と感じました。一方で、ふわっと「こういうことができるとよいな」という状態のまま相手に声をかけてしまうケースは少なくないと感じますが、こうした場合はどんな風に行動すればいいでしょうか?

間違っていてもいいので自分なりの推察が言語化できている状態が理想だとは思いますが、頭の中ではなんとなく言いたいことが整理できているのにアウトプットしようと思ってもうまくいかない……ということはありますよね。情報が整理されていない状態で行くと、適切なアドバイスを受けられない可能性がありますし、共感も得にくいです。

私がよくやっているのは「相談の相談」をすることです。知り合いの中で人脈のハブになっている人や聞き上手な人に話して、頭の整理をさせてもらっています。「まだ構想の段階なのですが」と伝えておくと、相手もそのつもりで話を聞いてくれるはずです。相談の相談をすると、頭の整理ができて新しい発見につながったり、必要な人をつなげてくれたりする場合もあります。

ーー 「相談の相談」は、やりたいことに対してアドバイスをもらいたい「相談したい相手」ではなくてもよいのでしょうか。

大丈夫です。具体的なアドバイスを求めるというよりも「相談のための相談ができる人」という方というイメージですね。

オウンドメディア担当者は相談で種まきを

ーー 企業でオウンドメディアを運用する担当者の中には、専任者は一人で、必要に応じて社内の別メンバーや社外パートナーへの協力を仰がないと運用ができないケースも少なくありません。例えばオウンドメディア上で自社商品の開発担当者のこだわりや秘話などを語ってもらう取材記事の協力や、ノウハウ記事を執筆してもらいたい、といったことがあります。

ただ、実際に担当者(あるいは担当部署のマネージャーレイヤー)に声をかけても「今忙しいから」「これに協力して何になる?」とネガティブな反応が返ってきた……という経験を持つオウンドメディア運用者は決して少なくないように思います。相手に前向きに協力してもらうために、どんな相談を心がけるとよいでしょうか?

これは、最終的には特定の方に協力を「依頼」し快諾してもらうことを目指しているケースだと思います。難しいのが、「相談」と「依頼」は違うということです。

ただ、ここでも相談の力を使って、結果「依頼」をスムーズにしていくことはできると思います。依頼だとイエス・ノーで答えねばならず、お互いハードルが高いですが、相談は相手側にとっても、もう少し気軽に捉えてもらいやすいです。

この場合は、依頼前に「こういうことをやりたいと思うのですが、誰に相談したら良いと思いますか?」のようにまずは小さな相談を持ちかけるのが良いと思います。相談をすることで関係性ができ、背景や目的も伝えることで結果的に協力してくれるかもしれません。もし相談で終わっても、別の適任者を紹介してくれるパターンもあります。相談を通して新しい可能性が開けることがあるため、まずは直接的な依頼にならないようなファーストコミュニケーションを取ってみるのが良いと思います。

ーー そのためには、あらかじめ社内でプロジェクト(オウンドメディアの存在)を認知してもらうのも大切かと思いました。例えばオウンドメディアをどんな目的でどんなコンテンツを展開しているのか、メディアのゴールは何を目指しているのか、また現時点でどんなポジティブな影響があるか、といったことを積極的に発信するようにして、「あのオウンドメディアね」「自分もオウンドメディアで取材されたい!」という風に思ってもらえるような動きが大切なのかなと。

その通りだと思います。緩やかなつながりを作っておくことがとても大切で、いざという時の相談もしやすくなりますし、依頼のハードルも下がるでしょう。

ーーあらかじめ種まきしておくイメージですね。たしかにオウンドメディアを運用することでこんな成果がある、というのを日頃からアピールしておくことで、相談を持ちかけるときに少なくともやりたいことの目的や相談の背景が伝わりやすくなるような気がします

他にも緩いつながりを持っておくことで、メディア担当者にとってさまざま分野を解像度高く理解できるようになるメリットもあります。「この分野の人はこんな悩みがあるのか」のような知識を得ると、メディア運営や企画の立案などにとても活きてくるのではないでしょうか。分野が違うからこそのシナジーが生まれることも。普段から緩いつながりを作っておくのは、手間のかかることではありますが、とても大切だと思います。

ーー ありがとうございました!

取材・構成・撮影:吉田櫻子

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