ヘッダー設定

株式会社HAPPY ANALYTICSの小川卓 (id:ryuka01)です。

記事単位のPVは追えているのに、記事内に設置したCTA(バナーやテキストリンク)の成果は計測できていない、というケースが体感で半分以上あります。

もったいないのは、多くの現場が「見よう見まねの我流設定」で止まっていることです。ネットで調べてなんとなくGTM(Googleタグマネージャー)を設定したものの、「本当にこの計測方法で合っているのか?」と不安を抱えたまま運用している。そんな声を本当によく聞きます。

今回は、エンジニアに頼らずメディア担当者が自力で設定でき、しかもあとから分析しやすい「CTA計測の最適解」を、設定手順から改善アクションまで通しで解説します。一度仕込んでしまえば、後はデータが自動的に蓄積されていきます。

設定より先に「設計」。イベント名とパラメータを決める

いきなりGTMを開きたくなる気持ちを、少しだけ抑えてください。CTA計測でつまずく原因の多くは、設定ミスではなく設計不足です。

よくある失敗が、CTAごとにイベント名を変えてしまうパターン。banner_click、click_btn、CTAclick……担当者が変わるたびに命名がバラバラになり、半年後にはどのイベントが何を指しているのか、誰も分からない状態になります。

実際、私が過去に拝見したあるメディアのGA4には、クリック系のイベント名が14種類も乱立していました。こうなると、集計し直すだけで丸一日仕事です。

命名の原則はシンプル。イベント名は「cta_click」の1本に統一し、どのCTAかはパラメータで区別します。イベントに紐づけるパラメータは、基本として以下の3つを設定するのがおすすめです。

パラメータ名 中身 設定例
cta_id CTAの識別子 wp_dl_seo(SEO資料DLバナー)
cta_position 記事内の設置位置 article_bottom、article_middle
link_url リンク先URL {{Click URL}}で自動取得

cta_idとcta_positionは、HTML側でCTAのリンクに data-cta-id="wp_dl_seo" data-cta-position="article_bottom" のようなカスタムデータ属性を付けておき、GTMの「自動イベント変数(要素の属性)」で取得します。あるいはすでに別の名称が付いている場合は、それを利用しても問題ありません。HTMLに触れない環境なら、Click URLとClick Textで代用しても構いません。

この一手間をかけた設計が、その後の分析のしやすさを大きく左右します。

GTMでのクリック計測は5ステップ

設計が決まれば、あとは手を動かすだけです。流れは次の5ステップ。

①組み込み変数の有効化

GTMの「変数」画面で、Click URL、Click Text、Click Elementなどクリック系の組み込み変数にチェックを入れます。

②カスタム変数の作成

変数タイプ「自動イベント変数」で、要素の属性 data-cta-id と data-cta-position をそれぞれ取得する変数を2つ作ります。

ここで作った cta_id と cta_position の変数は、後ほどGA4側でカスタムディメンションとして登録します。

なお、link_url は、手順1で有効化した組み込み変数「Click URL」をそのまま使うため、新たに作る必要はありません。

③トリガーの作成

タイプは「クリック - リンクのみ」を選び、「一部のリンククリック」で「Click Element / CSSセレクタに一致する / a[data-cta-id]」と指定します。これで、data-cta-id属性が付いたリンクだけが計測対象になります。

トリガー設定のイメージ
トリガー設定のイメージ。data-cta-id属性付きのリンクだけに絞り込むのがポイント(以下、画面はイメージです)

④GA4イベントタグの作成

タグタイプ「Google アナリティクス:GA4 イベント」を選び、イベント名にcta_click、イベント パラメータに手順②で作った変数を紐づけます。

タグ設定のイメージ
タグ設定のイメージ。イベント名は1本、識別はパラメータで行う

⑤プレビューで検証してから公開

GTMのプレビューモードで実際にCTAをクリックし、Tag Assistant画面でタグが「Fired」になっているか、パラメータに想定通りの値が入っているかを確認します。

ここを飛ばして公開する人が意外と多いのですが、検証なしの公開は計測事故のもとです。

公開前の検証画面イメージ
公開前の検証画面イメージ。パラメータの中身まで確認するのが大切

一つ注意点を。GA4の拡張計測機能で「離脱クリック」をONにしている場合、外部リンクへのCTAはclickイベントとしても二重に記録されます。壊れるわけではないので慌てなくて大丈夫ですが、集計時はcta_clickだけを見るようにしてください。

一番忘れられがちな仕込み。カスタムディメンション登録

GTMからパラメータを送っただけでは、GA4のレポートでcta_idを分析の切り口として使えません。

GA4の管理画面から「カスタム定義」を開き、cta_idとcta_positionをイベントスコープのカスタムディメンションとして登録します。作業自体は2分で終わります。

公開前の検証画面イメージ
カスタムディメンション登録のイメージ。cta_idとcta_positionの2つを登録する

注意点は一つだけ。登録が反映されて探索レポートで使えるようになるまで、24〜48時間ほどかかる場合があります。しかも、登録前に送信されたデータはあとから遡って分析することができません。

GTMの公開とカスタムディメンション登録は、必ず同じ日のうちにセットで済ませておきましょう。

探索レポートで「どの記事のどのCTAが働いているか」を見る

データがたまったら、いよいよ分析です。

GA4の「探索」で空白レポートを作り、行に「ページパスとスクリーンクラス」、列に「CTA ID」、値に「イベント数」を置き、フィルタでイベント名をcta_clickに絞ります。これだけで「記事×CTA」のクロス集計が完成します。

公開前の検証画面イメージ
探索レポートのイメージ。PVが同水準でもCTAクリック数に大差がつくことは珍しくない

例えばこんな結果が見えたとします。SEOライティングの解説記事では、資料DLバナー(wp_dl_seo)が月120クリック。一方、ほぼ同じPVがあるGA4入門記事では、同じバナーがたった8クリック。この差はどこから生まれたのか。記事のテーマと資料の相性か、バナーの位置か。ここからが改善の入り口です。

さらに一歩進めたい方は、GTMの「要素の表示」トリガーでCTAの表示回数も計測すると、クリック数÷表示回数でCTR(クリック率)まで出せます。

CTA自体がスクロールされずに見られていないのか、見られているのにクリックされないのか。この切り分けができると、打ち手の精度が一段上がります。余力が出てきたら、ぜひ挑戦してみてください。

「要素の表示」の設定方法は私のGA4情報サイト「ga4.guide」を参考にしてください。
www.ga4.guide

数字を眺めて終わりにしない。改善の型は「位置・文言・オファー」

計測はゴールではなくスタートです。ここでは私が現場でよく使っている判断の目安を紹介します。

記事内CTAのCTRは、経験上1〜3%程度に収まることが多いです(媒体やオファーによって大きく変わるので、あくまで肌感覚の目安として捉えてください)。もし0.5%を切るCTAがあったら、以下の順番で疑います。

まず「位置」。記事の最下部にしか置いていないなら、読者の多くはそこまで到達していない可能性があります。本文中盤、関連する話題の直後への追加設置を試みましょう。

次に「文言」。例えば「詳しくはこちら」より「SEO記事の書き方チェックリストを無料DL」の方が、クリックした先に何があるか明確です。

最後に「オファー」そのもの。記事のテーマとCTAの中身がズレていたら、位置や文言をいくらいじっても伸びません。先ほどの120対8のクリックの差も、原因はたいていここにあります。

月に1回で構わないので、この探索レポートを見る日をカレンダーに入れてしまいましょう。GA4のメモ機能に「◯月◯日、CTA文言変更」と残しておくと、施策と数字の変化が紐づいて、翌月の振り返りが格段に楽になります。

▼「メモ機能」の活用方法はこちら
www.hatena.ne.jp

まずは30分、GTMを開くところから

CTA計測の設定は、慣れれば1時間ほどで終わります。たった1時間で、これまで「なんとなく置いていた」バナーやリンクの一つ一つが、数字で語ってくれるようになる。費用対効果としては、かなり割の良い投資だと私は思っています。

完璧な設定を目指して足踏みするより、まずはメインのCTA一つからで大丈夫です。今週、GTMを開く時間を30分だけ確保するところから始めてみてください。

* *

今回、寄稿いただいた小川卓氏による過去の連載記事も合わせてご覧ください。

また、Googleアナリティクス4のオンライン勉強会のレポートもご覧いただけます。

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著者:小川卓
ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の役員、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。
主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。
X:@ryuka01

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