民法相殺について


A社/B社間の特許の侵害事件が発生したとします(双方国内企業とします)。

BはAに対し2001年に特許を侵害されたとして同年に訴訟を起こそうとしたところ、A側社内調査の結果、BによるA特許(1979年に取得)の侵害が確認されたのでAB間の相殺をAから模索しようとします。

Aの自働債権(Bによる侵害)が1980年に発生したものであれば、20年の除斥期間(改正前)が過ぎているので相殺適状にはならない。仮に「1982年の侵害」であれば、相殺適状である。・・・論点甲

又、仮に「Bによる1998年の侵害」であるとすると、侵害時から20年以内の2018年以前であれば、「その時A特許がとっくに失効していた」としても相殺適状であると主張できる・・・論点乙

そういう理解でよろしいでしょうか?
1979年の古い特許でも侵害時起算で最長20年+20年の権利主張ができる、と。

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  • 終了:2024/06/02 16:53:46

回答1件)

id:MIYADO No.1

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これは改正経過措置で改正前民法が適用され、不法行為なので相殺できません。

 

しかし、おそらくそういうことを質問したいわけではないんだと思います。経過措置を無視して現民法が適用されるとします。

 

現民法だと民法509条の「悪意による不法行為」をした側はそもそも相殺できません。現民法のここの判例はまだ見当たりませんが、破産法253条1項に同様の規定があって、この「悪意」は「故意」よりも悪質な行為を指すとされます。例えばあなたが画期的な防水方法を発明して特許を取ったとします。すると公開されますから、技術的には真似しようと思えば真似できます。それで、業者Xがあなたに無断でその防水技術を使ったとします。この場合、Xがあなたに怨みがあるからわざとやったのなら悪意ですが、まあ問い合わせれば有料で許諾を得られるだろうけど金がかかるし無断でやってもばれないだろうから経費節減のために無断でやったというだけなら悪意とは言えません。(単なるたとえ話であって、実際の判例は「不法行為 悪意」で検索しましょう。)

 

それで、論点甲について、「悪意」と言えない場合に相殺できるのか、というと、

民法

(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)

第五百八条 時効によって消滅した債権が【その消滅以前に相殺に適するようになっていた】場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

とあるので、論点甲のとおりだと考えられますが、ただし【その消滅以前に相殺に適するようになっていた】というのは相殺を実際にしようと思えばできた(要するに、特許権侵害をされたことを認識していた)ことも要すると解釈するなら、BによるA特許の侵害が時効完成前に分かっていなければAは相殺できない、ということになります。

 

論点乙については、特許権の存続期間内に行った行為がその時点での不法行為なので、不法行為債権の時効は特許権が切れても影響はないということでおかしくありません。

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id:MIYADO

確かに加害者側から相殺できないだけであって、被害者側の債務が消滅するわけではないから、意味のない制度ではないかという疑問はあるかもしれませんが、重要なのは被害者が無資力の場合です。被害者が医療費や生活費に使って、被害者側の債務が履行できなくなったら今度は「破産」という別な制度に移ります。正確には破産しただけで債務は消滅しませんが、破産に伴って「免責」が認められればその時点で被害者側の債務が消滅します。

 

私は貸金主任者試験にも合格しております。破産法も出ます。試験開始当初はかなり騒がれましたが、宅建と違って人気資格にはならずじまいですが。

2024/05/23 07:55:42
id:MIYADO

正確には、免責で「消滅」ではなく自然債務として残るというのが判例・通説

https://higashimachi.jp/column/226/

2024/05/23 10:36:17

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