日本ビジネスシステムズ(JBS)は、Microsoft プロダクトを中心とした情報系サービスの導入コンサルティング、構築、アプリケーション開発、システム保守・運用までワンストップで提供する独立系クラウドインテグレーターです。2022年8月に東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。
同社では、2022年3月より技術ブログ「JBS Tech Blog」を運用しています。運用を担当している人材戦略部長 辻陽太さん、人材戦略部 エキスパート 舟越匠さんに、ブログ運用の戦略策定や運用体制などについてお話をうかがいました。
日本ビジネスシステムズ株式会社 人材戦略部長 辻 陽太氏
2004年JBSグループ会社入社。現場部門でエンジニア、マネージャーを経て2010年より人材開発に従事。全社員の育成及びエンゲージメント向上施策の推進を担当。
日本ビジネスシステムズ株式会社 人材戦略部 エキスパート 舟越 匠氏
2002年に新卒入社。現場でのエンジニアやPMを経験後、現在はAzureやMicrosoft 365などのMicrosoftサービスを中心とした社内向けの技術研修の企画から実施までをメインとしている。技術スキル育成の一環でJBS Tech Blogの運用責任者を担う。
執筆者は自主的に執筆!エンジニアであれば誰でも投稿のチャンスあり
__JBS Tech Blogの目的、立ち上げの背景について教えて下さい。
辻さん 弊社には社員の約8割となる1,800名を超えるエンジニアが在籍しています。高いスキルを持つエンジニアも多くいますが、日々の業務に注力するなかで、なかなか表に出る機会や時間を作れていないという課題がありました。そんな優秀なエンジニア個人にスポットを当てる場を用意できないかと考え、生まれたのがJBS Tech Blogです。
一方で若手のエンジニアが日々学んだことをアウトプットできる場を自社で整備できていないという課題もありました。若手のエンジニアの成長のためにも、インプットしたことを整理して発表する場所があることは良いことです。社内SNSのような場所でもいいのではないかという意見もありますが、対外的に発信することで、外の世界にも目を向けてほしいという思いがあり、JBS Tech Blogを活用してもらおうと考えました。
__JBS Tech Blogの運用を開始したのは、いつ頃ですか?
舟越さん 外部に公開するようになったのが、2022年3月1日からです。それに先立ち、2021年12月からの3か月は準備期間として、社員のみアクセスできるクローズドな環境で記事の作成、公開を行っていました。
__たくさんのエンジニアの方がそれぞれ記事を書かれていますが、運用の体制はどのようにしていますか?
舟越さん まず、これからブログに記事を書いていきたい、という人には、執筆にあたってのガイドラインや投稿に必要な規約について読んでもらい、申請フォーム上で同意してもらいます。申請受領後に私の方で登録作業を行い、寄稿者権限のIDを設定します。その後は、好きなタイミングで記事を書いてもらいます。
執筆者がはてなブログMediaで記事を下書きしたのち、私が編集作業を行います。何度かやり取りして校了したら、タイミングを調整して公開しています。
__執筆は、本人の自主性に任せてらっしゃるのですか?
舟越さん はい、強制や順番ではなく、それぞれ書けるタイミングで書きたい内容を書いてもらっています。現在は、営業日は毎日更新することを目標に運用しています。
日々の地道な活動で執筆者を募集
__寄稿者としてID登録している方はどのくらいいるのでしょうか?執筆者を増やすための活動についても教えてください。
舟越さん 現在約60名のエンジニアが執筆のためのIDを取得しています。ブログを開始したときに、社内のポータルサイトにお知らせを掲載し、執筆のお願いをしました。社内で使っているMicrosoft Teamsのエンジニア向けのチャンネルでも、執筆者の募集をしたり、記事の更新情報を配信したりしているので、そこから登録してくれる人もいます。
あと、私が社内向けの技術研修を行っているので、その中でブログと執筆者の募集について説明したり、研修後に技術的な質問があったときに、「それをテーマにブログで書いてみたら?」と促してみたり、という地道な普及活動を通じて執筆者を増やしていっている状況です。
__60名も執筆者が集まっているのは素晴らしいと思います。記事のレビュー、編集で気をつけていることはありますか?
舟越さん 日本語、技術文書としてのわかりやすさを意識しています。テーマに入る前に、前提となる説明を入れる、章の分け方を工夫して、区切りをわかりやすくするなど、読者に読みやすいようにしています。
私自身エンジニア出身で技術研修を行っているので、自分の専門分野についてはわかるものの、ブログでは幅広い技術を扱っているのですべての技術の詳細を把握しているわけではありません。技術的な正確性については、執筆者に注意してチェックしてもらうようにしています。
オウンドメディア設計ワークショップに参加し、戦略設計
__ブログの開設前に、はてなのオウンドメディア設計ワークショップに参加されたということですが、参加したきっかけはなんだったのでしょうか?
辻さん ブログによる社外への発信という取り組みについて、当初は具体的にどのような目的で運用していくべきなのか決まっていませんでした。人材戦略部として、情報を外向けに発信するのは初めてということもあり、明確な目的が設定できていない中で始めることに不安を感じていました。
ブログを始めるにあたって、複数のサービスベンダーから提案を受けましたが、その中ではてなさんからオウンドメディアを始める際に必要な情報を揃えることのできる設計ワークショップについて案内を頂きました。はてなさんのシステムを採用するかどうかは別として、ワークショップで戦略を整理してみようと思い、2021年8月に人事戦略部から3名で参加しました。
__ワークショップの内容はいかがでしたか?
舟越さん オウンドメディア設計シートをもらって、メディアコンセプト、ペルソナ、カスタマージャーニーについて議論を深めていきました。参加メンバーを中心に考えていきましたが、途中議論が行き詰まったり、わからないことがあったりしたときに、はてなさんのスタッフの方からその場ですぐアドバイスをもらえたので助かりました。
(設計シートのイメージ / ※ワークショップで使用しているものとは内容が異なります : 【無料DLあり】オウンドメディア設計シートを使って「決めなければいけないこと」を把握しよう - はてなビジネスブログ - はてなビジネスブログ)
数時間のワークショップのなかでレクチャーを受けて議論しましたが、その後で最終的なアウトプットに向けて、さらに参加者で詰めていき、課題、ゴールなどを含めて整理できました。
辻さん ワークショップを通して戦略と目的を策定することができ、経営陣の提案資料にも盛り込むことができました。経営陣もこのTech Blogの取り組みには好意的であるものの、「諸刃の剣」だとも言われました。社外に向けて発信するということは、会社のイメージを良くすることもできる一方、悪くするリスクもあるということで、身が引き締まりました。
__ワークショップで決めた内容はどのように使っていますか?
舟越さん 編集を担当する我々の間では言語化された共通認識としてあり、今後方針に迷った時に、戻れる場所として存在しています。例えば、他部署から「このトピックを載せてほしい」と言われた時に、それを載せるべきかどうか当初の目的や設計に照らしあわせて判断できます。
記事執筆は人材育成の一環。多くの人にチャレンジしてほしい
__コンテンツの制作方針について教えて下さい。
舟越さん 技術情報であればテーマは自由ですが、自社サービスやイベントの宣伝しか書いていない記事はNGとしています。レベルについても、入門でも上級者でも、執筆者に任せています。編集の段階で、このレベルであれば、○○についての説明も加えてください、というような依頼をすることもあります。
記事の執筆は、エンジニアの育成の手段の1つと捉えています。レギュレーションや記事レベルをこちらで決めてハードルを上げるよりも、まずは自分の知識を書いてもらって、私が伴走しながら仕上げてクオリティを上げるようにしています。執筆の自信がないという人もいるので、「しっかりサポートするから」と伝えて、チャレンジしてもらっています。
__編集の作業時間はどれくらいかけていますか?
舟越さん 記事によりけりですが、執筆に慣れている人の原稿は誤字脱字のチェック程度で、ほぼそのままで公開できます。書き慣れていない人の場合は、何度かやり取りをしてブラッシュアップしていきます。平均すると、1本辺り1時間程度でしょうか。現状では、私の作業工数の約1/3をブログ運営に割り当てています。結果、基本的には営業日ごとに1本の記事を公開できている状態です。
__公開に先立ち、クローズドな環境を用意されたと伺いました。
舟越さん はい、正式に公開する前に社員限定のクローズ環境としてAzure上にWordPress環境を作成して運用をしていました。公開前にクローズドで運用をしたのは、これからの体制づくりの参考にするためです。実運用でどういった作業が発生するのかを洗い出すことが目的でした。
例えば、利用開始申請や記事レビュー依頼のフローを自動化する仕組み、よくある質問と回答などは、クローズ環境の段階である程度出来上がっており、公開後のスムーズな運用につながりました。
__はてなブログMediaを選んだ理由について教えて下さい。
舟越さん クローズ環境ではプラットフォームと社員限定アクセスを手軽に実装できることからWordPressを利用しましたが、本番運用で、プラットフォームおよびWordPress本体のアップデート、セキュリティ対策などの保守管理を続けるのは我々の体制では現実的ではないと考えていました。そこでSaaSとして利用可能なブログサービスから、以下の要件を満たすものを探しました。
- 複数人のアカウントを登録でき、記事ごとに投稿者を分けられること
- 商用利用可能であること
- 独自ドメインで運用できること
- 日本語のサポートがあること
これらの要件を満たすサービスの中でも、ブログに特化していること、エンジニアとの親和性が高そうなこと、投稿やカスタイズがしやすそうなことから、はてなブログMediaを選択しました。
アクセス数は追わない。ID登録者数と記事公開本数を目標に運用
__クローズ環境からの移行作業はどうでしたか?
舟越さん 移行前にすでに30本くらいの記事が投稿されていたので、これをストック記事として少しずつ公開しながら、並行して新規の記事を投稿していくことを考えていました。ただその際に、WordPressからエクスポートした記事をはてなブログ側にインポートすると、記事作成者が分かりにくくなってしまうという問題が発生しました。
この問題を回避しつつ、移行の手間を減らすための作業方法を試行錯誤し、最終的には無事に移行が出来ました。なお、その手法については、同様のケースを検討された方への参考になればと思い、ブログ記事の一つとして公開しています
__はてなブログMediaの使い勝手はいかがでしょうか。
舟越さん 執筆を担当するエンジニアも含めて、混乱なく使えており満足しています。ブログ全体のデザインをCSSで細かくカスタマイズできる点も気に入っています。
__集客施策、アクセス解析などはどうしていますか?
舟越さん マーケティングチームと一緒に、Google アナリティクスを使ってアクセス解析をしています。アクセス数は、投稿者各自把握できるように公開しており、モチベーションにしてもらっています。
集客施策としては、広報チームが、SNSの公式アカウント(Facebook、LinkedIn)で月に1~2回記事をまとめて紹介する投稿をしています。また、はてなブックマークの編集部アカウントを作成して、記事の紹介を兼ねたブックマークをするようにしています。社内向けには記事の公開を自動でエンジニア向けに通知する仕組みを用意して共有するようにしています。
__KPIは設定していますか?
舟越さん KPIとしてアクセス数は追わないようにしています。 当初の目的から外れてアクセスを増やすためだけの記事が増えることを避けたいことが理由です。現在は、投稿者を増やすこと、営業日は毎日記事を公開して記事本数を増やすことを目標にしています。
辻さん 記事掲載数と同時に、執筆者のバランスにも注意しています。特定の執筆者に偏らないように、執筆者を増やしていっています。数値については、日常的に私と舟越でチェックして、都度すり合わせをしながら、細かく改善するようにしています。
舟越さん アクセス数は追ってはいないものの、開始してから順調に成長しています。お客様から「ブログを読んでいますよ」「ブログのファンですよ」という声をいただくこともあり、手応えを感じています。
__今後力を入れていきたいことはありますか?
辻さん 寄稿者の登録は現時点で60名ですが、もっと裾野を増やしていきたいと考えています。地道にブログを続けていくことで、学びをアウトプットすることが社内文化になるようにしていきたいですね。記事を書いて寄稿者自身の名前が社外に出ることをポジティブに感じてもらえるように、ブログを成長させたいです。
弊社のエンジニアのことを多くの社外の方に知っていただきJBSに興味を持ってもらいたいですし、そこから新たなビジネスにつなげていきたいですね。また採用のための自社ブランディングにも寄与していきたい。そのためには導入前に実施したワークショップで考えたペルソナや戦略に再度手を入れていくことも必要だと思っています。
舟越さん ブログから弊社のサービスへの流入も増えてきていますので、技術発信から他の部署の活動への流入を増やせればと思います。採用もその1つなので、動線を考えてみたいですね。
__今後の展開も楽しみです。ありがとうございました。
執筆:深谷歩