tayorini ~介護が不安な、あなたのたよりに~|tayorini by LIFULL介護
日本最大級の老人ホーム・介護施設の検索サイト「LIFULL介護」などを展開する株式会社LIFULL seniorでは、2018年11月よりオウンドメディア「tayorini」を展開しています。オウンドメディア立ち上げの目的や運用について、2020年4月より「tayorini」の編集長を務める北山さんにお話を伺いました。
新卒でLIFULLグループに入社し、審査部門と介護マーケットの営業部門を経験後、2019年10月にマーケティンググループの編集部へ異動。2020年4月より「tayorini」編集長を務める。
順調だったWebマーケティング施策の次の一手
__「tayorini」の立ち上げの目的について教えてください。
北山さん 弊社では、主力サービスとして「LIFULL介護」という老人ホームをはじめとする介護サービスのポータルを運営しています。SEOをはじめとするWebマーケティング施策によって、おかげさまで「LIFULL介護」への集客は順調に実現できているのですが、それらの施策でリーチできていない層へのアプローチについては課題がありました。
介護や老後に関する不安はどなたにでもありえるものですし、いまお困りでなくても将来的に情報が必要になる方や、すでに不安や悩みをお持ちの方でも我々がリーチできていない方のお役に立てる方法として、新しいメディアを立ち上げようと考えました。9か月ほどかけて、立ち上げの準備を行い、2018年11月に「tayorini」を開始しました。
__立ち上げ準備はどのように進められたのでしょうか。
北山さん 2018年2月にWebマーケティングの担当部署内で、オウンドメディアの立ち上げに向けたプロジェクトがスタートし、ターゲットやメディアのコンセプトについて戦略を立てていきました。社内のマーケティング担当の3名に加え、リクルートで「R25」を立ち上げたことで知られる藤井だいすけさん(@fujii_toyama)をアドバイザーとしてお招きして、セッションを重ねて詰めていきました。
__2018年11月のローンチ時の体制を教えてください。
北山さん 社内に1名の専任者を立てて、外部ブレーンである編集プロダクションさんやはてなさん、フリーライターさん4~5名にお手伝いいただいて運用をスタートしました。
__コンテンツ制作を編集プロダクションさんや弊社がサポートさせていただいていますが、パートナーの選定はどのような基準で行われたのでしょうか。
北山さん 藤井さんをアドバイザーとしてお迎えして議論していた時期に、我々がいま「届いていない」ターゲットは具体的に誰なのかというペルソナの設計を突き詰めて議論しました。「潜在層」という言葉に惑わされず、ターゲットについて整理したのですが、そのターゲットに合うコンテンツを制作いただけるパートナー会社さんはどこだろうと考えました。
具体的には、主に35歳~45歳までを中心としたWebでの情報収集に関心が高い層にリーチできるコンテンツが得意であるかとか、当社の考える理想的な「伝え方」に長けているかなどを基準にしました。
__2019年4月に改めてメディアのコンセプトやターゲットを見直したと伺いました。
北山さん はじめの3か月運用して、見えて来たことや迷っていることを洗い出しました。そこで、コンセプトを「介護のあたりまえから自由になろう」、ターゲットを「これから親や自分の老い・介護の問題に直面するであろう世代」としました。
介護される側ではなく「する側」の目線も大切に
__コンテンツに関して、企画や制作の方針、大切にしていることがあれば教えてください。
北山さん 我々が「tayorini」を通じて提供したいと思っている情報のなかで、大切にしているものが3つあります。
1つ目は「介護をする側の目線」です。介護される側を大切にする情報はたくさんあるのですが、介護する側を支えるようなコンテンツはこれまで少ないと感じていたので「tayorini」では、介護をする側の方々の目線にも立つことを大切にしています。
2つ目は「多様な生き方の選択肢のヒントになること」です。例えば、親御さんの介護について「子供が親を介護するのは当たり前」といった価値観などを前提としないこと。介護をしたくない人やできない人もいる中で、さまざまな価値観や生き方を肯定することで、気づきやヒントになるような情報が発信していきたいと考えています。
3つ目は「年を重ねることが楽しくなるような情報」です。老後に対して悲観的になってほしくないですし、自分が老後を迎えたときに、生きがいになるようなヒントの提供をしていきたいと思っています。
__どのような記事が人気なのでしょうか。
北山さん 学生時代からブレイク直前まで長年介護現場で働いてきたお笑い芸人・メイプル超合金の安藤なつさんのインタビューは、大きな反響がありました。

記事公開時だけでなく、安藤さんがご結婚されたタイミングでも多くの方に読んでいただいた印象です。記事に対する評価もそうですが、介護の仕事に携わってらっしゃる当事者の方々から「よく言ってくれた!」などのポジティブな反応を多くいただくことができました。
コンテンツ作成をお手伝いいただいているはてなさんにご協力いただいたなかでは、ブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」 のDainさんに寄稿いただいた記事が、いまだに週間PVランキングTOP5の常連となっています。これは検索からの流入も多い記事です。

はてな編集部との協力体制で高品質の記事を制作
__Dainさんの記事のように「tayorini」の中には、当社が編集をお手伝いさせていただいているものがあります。はてなが編集する記事について、特徴などがあればお教えください。
北山さん 記事のクオリティの高さが特長だと思っています。
稀にタイトルのインパクトを調整していただいたり、記事内で使用する固有名詞などを介護業界の正しい名称に変更していただいく程度で、弊社側で記事の内容の直しをお願いすることがほぼありません。
いただく原稿が毎回読みやすく、私自身も勉強させていただいています。
「tayorini」のコンセプトもきちんとご理解いただいており、それが原稿に反映されています。原稿の信頼感が大きく、安心してお任せできています。
__ありがとうございます。企画についてはいかがでしょうか。
北山さん はてなさんからは、著名人・ブロガーさんなど、弊社ではなかなか直接執筆をお願いできない方々への取材や寄稿の企画をご提案いただいています。
毎回、企画案をいただいた際に「すごい提案がきた!!」と社内で盛り上がったりしています。
どんな提案をいただけるか、いつも個人的に楽しみにしています。
__2019年9月には、当社主催のワークショップも実施いただきましたね。
北山さん 「一度、オウンドメディア設計に関するワークショップをしましょう」とご提案いただきました。はてなの担当者さんにファシリテーションしていただいて、「tayoriniでやりたいこと」を整理し、コンテンツの方向性を共有・イメージするために、課題やターゲット、成果について改めて言語化していきました。
私は編集者未経験だったのですが、異動して間もないこの時期に、このワークショップに参加させていただいて、媒体コンセプトがわかりやすく言語化されていたため、経験値は浅くても記事で伝えていくべきことが何なのかがすぐに見えました。
ワークショップを経て、ターゲット像がイメージしやすくなり、社外のライターさんに依頼する際にコンテンツのゴールや狙いについて、説明しやすくなったと感じています。
__振り返りや改善のサイクルを経て、現在はどのような体制で運営されているのでしょうか。
北山さん 2020年4月から、私が編集長として責任者となり、社内は2人体制、社外ははてなさんやフリーライターさんを中心に20名前後のパートナーと一緒に制作する体制になっています。
PVをメインにしながらポジティブな反応を重視
__「tayorini」のKPIについて教えてください。
北山さん 月間のPV数を追っています。オウンドメディアは成果が出るまで時間がかかります。「tayorini」はスタートしてまだ1年数か月ですので、まずは安定してベンチマークとしているPV数を毎月出すことを目指しています。ブックマークを起点とした拡散・流入に期待して、はてなさんとはKPIを年間の累計はてなブックマーク数としています。
__成果についてはいかがですか?
北山さん PV数は順調に成長している状態です。
読んでくださっている方も、ターゲットとして狙っていた層になってきています。また、検索順位上位の記事も多くなっています。
__記事が読まれるために取り組まれている施策について教えてください。
北山さん 記事に関しては、KWを意識してオーガニック流入も増やせることを意識しています。ただ、それを重視するだけでなく、ソーシャルメディアでポジティブに反応したくなるテーマやタイトルの策定を行っています。
あとはTwitter広告とはてなブックマークのネイティブ広告も活用しています。
はてなブックマークのネイティブ広告ですと、河相我聞さんに寄稿いただいた記事で多くの方が(ネイティブ広告の枠をきっかけに)ブックマークしてくださり、ポジティブなコメントをお寄せいただくことができました。
__今後チャレンジしたいことや解決したい課題はありますか?
北山さん 今後の課題はターゲットが知りたいことに対して、いかにタイムリーに記事を制作できるかです。また、トレンドに対応し、DiscoverやSNSでの流入をどうやって手に入れていくのかが重要だなと感じています。
__最後に、これを読んでいるオウンドメディアの運用担当者に何かアドバイスがあれば教えてください。
北山さん 当たり前のことなのですが、コンセプトがわかりやすく言語化されていることがポイントとなるかと思います。
1)媒体を通じて提供したい価値の明確化
2)届けたいユーザーの明確化
これがシンプルな表現で言語化されている状態になっていると、どんなテーマでもブレがなくなり、記事で伝えるべきことがハッキリ見えてきます。
また、社外の方に原稿をお願いする際も、コンセプトが伝わりやすくなり、更にその方の「書きたい気持ち」とマッチングできたら、良い原稿が届くと思います。
__ありがとうございました!